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| 美術史家 山下 裕二 |
同時代を生きる作家のものすごい表現に出会い、
「応援しなければ」と思ったんです
山下 裕二 Yamashita Yuji 明治学院大学教授、美術史家。1958年生まれ。東京大学大学院修了。赤瀬川原平と96年に「日本美術応援団」を結成し、現在までに6冊の共著を上梓している。著書に『伊藤若冲 鳥獣花木図屏風』(小学館)、『水墨画入門』(淡交社)、『岡本太郎宣言』(平凡社)、『日本美術の二〇世紀』(晶文社)など。 |
- 現代美術との出会いについて、教えてください。
もともと僕は、室町時代を中心とした日本美術史が専門です。でも、30代半ばごろから、だれも読まないような学術論文を書くことにフラストレーションがたまっちゃって(笑)。そこで、「いま・ここ」にある美術を見尽くそうと思い立ったんです。
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| 室町時代の《熊野縁起絵巻》断簡を広げる山下さん |
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| 資料を見ながら取材は進んだ |
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| 山下さんのカメラコレクション |
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| 狩野一信《五百羅漢図》を紹介した本 |
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| 所有の逸品、渡辺省亭《柳鷺図》 |
まずはこの目で実際に見ることが大切だと考えて、海外の大きな国際展から、国内の名もないギャラリーまで足を運びましたよ。その結果、ごく少数ですが、同時代を生きる作家のものすごい表現に出会った。そして「応援しなければならない」と思ったんです。
僕にとって応援の仕方はふたつあります。ひとつは作品を買うこと。これは、所有欲を満たすとか家に飾りたいとかいったことじゃなくて、才能に対するリスペクトです。もうひとつは、出版やテレビといったメディアで発信すること。自分のもちうる手段を使って、多くの人に情報を届けたいと考えています。
- そんな行為には、どんな思いが込められているのでしょうか。
作品を買うことは、あえていうなら献血に近いかな(笑)。若くて才能あふれる作家でも、たいていは貧しいから。作品が売れれば、背中を押せるでしょ。美術作品といえども、時計とか車とか、人々が叡智を捧げた製品といっしょ。しかも、「買う」という行為は、もっとも真剣に作品を見ることにつながるんです。美術館も、作品を展示するだけでなく、値段も公開すればいいのにね。美術がもっと身近になると思いますよ。
そして、発信する行為は、ひとことでいうと恩返し。僕ら評論家は、自分自身ではなにも生み出さないのに、美術についてあーだこーだと書きつらねて生活の糧を得ている。いわば、人のふんどしで相撲を取っているようなものなんですよ。この仕事で食べていけるのは、ありがたいこと。だから、僕なりの最大の恩返しの表現として、ほんとうにいい作家、作品だったら、どんどん紹介しています。
でも、言葉を使うことに忸怩たる思いがあるのも事実。美術作品について語るとき、言葉ですべてを伝えることなんて無理だということぐらい、十分にわかっているんです。でも、だからこそ、その外堀を少しでも埋めるために、多くの人に知ってもらうために、あえて言葉を使いたいとも思っています。
- 展覧会の企画などもされていますね。
そう、それも発信のひとつです。いまは、3年後に開催される展覧会に向けて、幕末の絵師、狩野一信の《五百羅漢図》の公開に携わっています。増上寺の収蔵品で、ほとんど知られていないけど、これがもう、すごいんです。赤瀬川原平さんとの共著『日本美術応援団 オトナの社会科見学』(中央公論社)で熱く語っていますが、どうぞ、お楽しみに。
このような、古美術に対する新しいアプローチを提示するということも、僕の役目と考えています。
- 古美術でも現代美術でも、作品を買って楽しむ人が、ここ数年で増えているといわれています。
ギャラリーやアートフェアなどに足を運ぶ人が増えているという話は、よく聞きます。値段がわかるというのは、大切なアクセス・ポイントですからね。
ただ、正直にいってしまうと、売られている現代美術作品は、ゴミになるかもしれません。1000年後、どれだけの作品が、価値あるものとして残っているのかは未知数です。だれもがこぞって美術に関わったり、欲しがったりする必要はないと思いますよ。ともすれば、一生関係せずに生きていく人のほうが多いわけで、それでいいんです。
美術といっても好みの問題ですから、それは食べ物と同じ。高級なお店で出された人気料理だとしても、僕がおいしいと感じるかどうかは別の話です。ただ願わくば、現在、世界中でおこっている日本食ブーム程度には、日本美術が浸透して認められてほしい、と思います。ささやかでも、そういう場で役立てば、僕の発信も意味があるというものです。
出典: ART BOOK vol.1 (※画像、内容一部改変)
Photo by SCENE inc.
(c) MORIMOTO Co.,Ltd.






