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対談 小山 登美夫(小山登美夫ギャラリー) x 田中 早苗(弁護士)
 
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アートの楽しみ方 | アートのある暮らしへの提案 Vol. 6
対談 小山 登美夫(小山登美夫ギャラリー) x 田中 早苗(弁護士)

小山登美夫ギャラリー代表 小山 登美夫 / 弁護士 田中 早苗


 アーティストも自分も成長していくから現代美術はおもしろい


このところ、現代美術マーケットへの注目度が急上昇。その先駆的貢献者のひとり、小山登美夫ギャラリー代表の小山登美夫さんと、弁護士として活躍し、アートコレクターでもある田中早苗さんに、現代美術の魅力と楽しみ方について語ってもらいました。


渡辺元佳《McDonald's-monx》
長井朋子の《A quiet night》(左)と《喫茶店》
桑原正彦《海浜公園》(左)と《工場跡地に咲く花》
以上、5作品全て田中さんのコレクションより
小山登美夫ギャラリーでの展示風景
2007年の「シュテファン・バルケンホール展」より
写真提供=小山登美夫ギャラリー

〔初級編〕ギャラリーに通ってみる

田中: 小山君との最初の出会いは90年代半ば。当時、新しく事務所を構えたので、そこに飾る絵を買いたかったんだけれど、どこに行ったらいいかわからなくて。そんなとき、共通の友人に紹介してもらったんです。年齢もいっしょだったし、友人を介して知り合ったから、最初から友達感覚で話ができたのはラッキーでした。画廊というと、白髪の老人が鎮座しているイメージだったから(笑)。
小山: とっかかりとして、だれかにギャラリーなりアーティストなりを紹介してもらうのは、ひとつの手。最初は、草間彌生さんのドローイング(デッサン画)を買ってくれたんだよね。草間さんはオオタファインアーツのアーティストだけど、僕の企画した展覧会に出してもらっていて、それを購入してくれた。当時いくらだったかな。
田中: 50万円。初めて買う作品としては高いかなと思ったけれど、相場がぜんぜんわからなかったから。でも、とても気に入った絵だったんです。プライベートで買うと思うと高いけど、インテリアとして事務所用に買うのなら、思い切ってこのくらいの投資はいいんじゃないかと思いました。
 それ以降、小山登美夫ギャラリーの展覧会に通いだしたんです。硬軟とりまぜたようなものが多くて、初心者にとっては刺激のあるものが多かった。
小山: 同じギャラリーでも、好きな展覧会もあれば嫌いな展覧会もあっておもしろいよね。いくつかのギャラリーとつきあいができれば、チョイスの幅も広がるでしょうし。
田中: そうですね。それに、見ていけば見ていくほど、人が眉をしかめるような絵も好きになってくるときが来る(笑)。スタッフから、「こんな絵を買うなんて。先生、変!」って思われてるんだろうな(笑)。
小山: コレクター同士で情報交換しながらコレクションを続けていくようになると、さらにおもしろくなるよね。


〔中級編〕展覧会の見方が変わる

小山: コレクターの作品の集め方にも、それぞれ個性が出るもので、日本の美術をきちんと収集していこうという意識のある人もいるし、自分のアンテナにひっかかったら、有名無名にかかわらず購入する人もいる。いろんな買い方があるよね。
田中: ギャラリーや他のコレクターとの交流を通して、自分だけの世界だったコレクションを客観視するようになって、自分のコレクションのあり方を考えるようになってくるんですよ。大げさですけど、プライスコレクションの「若冲と江戸絵画展」(*註)なんか見たら、「やっぱりコレクションって、こういうものなんだ」「もうぜんぜん足下にも及ばない」と思ったりして(笑)。展覧会も自分のコレクションについて、考えてみるきっかけになったりしますね。
小山: 現代美術の場合は、若手を紹介する展覧会も多いし、そこでいいアーティストを見つけることもできる。そうしたら、気に入った人の作品を継続的に見ていくんです。アーティストも自分も成長して変わっていくから、おもしろい。
田中: 私も、以前とは展覧会の楽しみ方が変わりましたよ。若手アーティストを紹介する展覧会だったら、「自分が作品を買うなら、どれがいいかな」なんて見方もできるから。
小山: 「今度の新作はいいぞ」と思って、さあ作品を買おうとしたら売れちゃってたりして(笑)、むずかしくもあるんだけれど。
田中: そこで悔しいと思うところも含めて、また楽しいんです。
小山: 友達と、欲しい作品が重なってしまうこともあるでしょ。
田中: 欲しいものをいわないようにしたりしてね(笑)。でも、小山君自身もコレクションをもっているから、いちコレクターとしてアドバイスしてくれているという安心感があります。コレクターという同じ立場で「この作品はいい」といってくれるから。
小山: 僕がいいと思う作品は、そのアーティストのイメージに合っていて、代表的な作品だと思えるもの、それから新しくチャレンジしていると思えるもの。ほかの人にも、いろいろ聞いてみたらいいと思うんだけどね。


〔上級編〕若手アーティストを発掘、紹介する

小山: 田中さんは、ギャラリーだけじゃなくて、若手アーティストを対象にした現代美術公募展などもチェックしていますね。
田中: そうですね。ギャラリーがつく前の若手の作品も買っています。まだ発掘されていない若い人たちの作品も見たくて、東京藝大の卒業制作展も行ってみたんです。コレクターとして、次の段階に突入しました(笑)。
小山: 気になるアーティストを見つけて、「この作品、どうかな」って見せてくれるし。
田中: 実際に紹介した人が、ほかのギャラリーで展覧会をしたケースもあるんですよ。
小山: 田中さんも目が肥えてきたから(笑)。やっぱり好きなものを追い求めるには、自分はなにを好きなのかを考えなくてはいけないし、作品についても深く知りたくなってくる。それで自分の世界が広がっていくというのは、すばらしいこと。
田中: 私の場合、アートへの興味が事務所のスタッフにも広がっているんです。
小山: たとえば、何十万円で買った作品が、あとで何千万円になって儲かった人がいるとかいう話がありますよね。でも、購入したときは、その何十万円でも購入するのに勇気が必要だったと思うし、儲けようとして買ったわけじゃないんだよね。いまは投機目的で買う人もいるけれど、その意味では失敗する確率も高い。やっぱり、好きじゃなきゃね。
田中: そうですね。
小山: 基本的に大事なのは、アーティストのいろいろな表現を見て、それを楽しめるということ。それも買う人たちの才能だと思う。新しいアーティストがどんどん出てくるし、現代美術の世界には、いつも新鮮な驚きと喜びがありますからね。


*註 「プライスコレクション 若冲と江戸絵画展」は、2006年夏に東京国立博物館で開催され、京都、福岡、愛知に巡回した展覧会。アメリカ人の個人コレクションであることも大きな話題だった。


 小山 登美夫  Koyama Tomio

小山登美夫ギャラリー代表。1962年生まれ。東京藝術大学在学中から西村画廊にてアルバイトを始め、89年より白石コンテンポラリーアートに勤務。その後、96年に独立して、東京・佐賀町の食料ビルにて小山登美夫ギャラリーをオープンした。現在は、清澄白河に移転。国内外の現代美術を専門に扱う。


 田中 早苗  Tanaka Sanae

弁護士。田中早苗法律事務所代表。1962年生まれ。女性と人権、報道と人権などの問題に積極的に取り組んでいる。『別れたあとで後悔しない離婚と手続き 改訂版』(主婦と生活社)、『スクール・セクハラ防止マニュアル』(明石書店)など、著書も多数。


出典: ART BOOK vol.1 (※画像、内容一部改変)
Photo by SCENE inc.
(c) MORIMOTO Co.,Ltd.

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