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ヨーロピアンスタイル・アートフェア in 上海 - ShContemporary

ShContemporaryが行われた上海国際展示場

9月5日から3日間、上海で行われた第一回ShContemporaryを訪れた。Art Basel(スイス)の前ディレクターが企画し、5年をかけて準備された鳴り物入りのアートフェアだ。中国やインドの現代アートは今や飛ぶ鳥を落とす勢い。オークションでは未曾有の落札価格を更新し、さらにアジアの好景気を受けて、ニューリッチや潜在コレクターをターゲットに、まさに絶妙のタイミングで開催されたといってもいい。オープニングを含めた5日間で25,000人が来場。世界23カ国から130ギャラリーが参加した。そのうち、欧米とアジア諸国の割合は半々。日本からは、アラタニウラノ、MEM、ミヅマアートギャラリー、ナンヅカアンダーグラウンド、オオタファインアーツ、レントゲンヴェルゲ、SCAI the Bathhouse、タカイシイギャラリー、小山登美夫ギャラリー、ヒロミヨシイ、山本現代の11ギャラリーが参加した。



アートフェア東京ディレクター辛 美沙とCIGEのLuca Zordan氏、Glamour barにて
VIP opening 風景
Ai Weiwei, Best of Artists
(c) Galeie Urs Meile
名和晃平, ixCell-Deer#6, 2007
SCAI / 白石コンテンポラリーアート
Talk event: "Self-Made: The Artists Behind Contemporary Art in Asia"
左二人目から: Zaira Hashimi, Jitish Kallat
右端: Song Dong
Damien Hirst, Beautiful Romance in the Age of Uncertainty Party Pinting I, 2003
(c)Kukje Gallery
Café風景
地元メディアの取材に応じるPierre Huber氏

そのバブルな雰囲気はオープニング前夜から始まっていた。9月4日、私はホテルに着くや否や、Pierre Huber Prizeパーティに参加するため、アートフェア東京ディレクター辛美沙が待つBund沿いのGlamour barへ向かった。会場へついたのは、すでに夜11時を回っていたが、シャンパン片手に会話を楽しむアート関係者の夜は熱気に満ち溢れ、まだまだこれからといったところだった。シャンパン、カクテル、フィンガーフード、クラブミュージックなどなど、どれもがヒップでお洒落だ。その他オープニング前夜のみならず、VIPカードホルダー限定のパーティやギャラリーのオープニングが連日開催され、ShContemporaryのVIPイベントは、上海の夜を華やかに彩っていた。

ディレクターには90年代Art Baselのディレクターを務めたロレンツォ・ルドルフ(Lorenzo Rudolf)、アーティスティック・ディレクターにスイスのアート・ディーラー、ピエール・フーバー(Pierre Huber)が就任していた。フェアを運営するオーガナイザーはイタリアのボローニャ・フィエレ社(BolognaFiere)。 ShContemporaryは、上海文化振興団体と手を結びつつも、ヨーロピアン・スタイルのアートフェアとなっていた。フーバーは5日の記者会見で、次のように話していた。「アジアのアートは本当に魅力がある。しかし、マーケットはまだまだ未成熟だ。今こそ、この欧米中心のアートマーケットを越境・拡大し、すばらしいアジアン・アートを享受しようではないか」と。そして「西洋と東洋の文化の架け橋になる」ともコメントした。

このフェアは、主に3つの大きなセクションによって構成されていた。
まず、100のギャラリーが集まっている”Best of Galleries”。全体の約2割を占める中国ギャラリーに並んで、欧米の主要ギャラリーも中国アートを逆輸入していたことは特徴的だった。会場では、アイ・ウェイウェイ(艾未未)、ジャン・シャオガン(張暁鋼)、ファン・リージュン(方力鈞)、ユエ・ミンジュン(岳敏君)など中国のビッグネームの作品もあり、中国アートの「今」が一望できた。

そのほかに、主催者が積極的に選定を行ったプログラム、”Best of Artists”、”Best of Discovery”があった。”Best of Artists”はすでに評価の得ているアーティストを、そして”Best of Discovery”は注目すべき若いアーティストを、ギャラリーごとに展示販売する企画。フーバー自らがそれぞれアジア各地へ赴き、画廊をリサーチしてアーティストを発掘したのだという。会場のもっとも目立つ場所に展開されていたことから、この企画への力の入れようは一目瞭然だ。主催者側もこのキュレトリアル・プログラムは「今後、アートフェアでマイルストーン(道標)になりうる」と評している。日本からは、SCAIの宮島達男、小山登美夫ギャラリーの奈良美智が”Best of Artists”(全16アーティスト)に、そしてSCAIの名和晃平、ヒロミヨシイのエンライトメント(Enlightenment)、山本現代のできやよい、村山留里子が”Best of Discovery”(全20アーティスト)に選ばれていた。

さらに、アジアのアーティストにスポットライトを当てたイベント、Asia Art Pacific誌主催のトークプログラムが7日に催された。”Self-Made: The Artists Behind Contemporary Art in Asia (セルフメイド: アジア・コンテンポラリー・アートを支えたアーティスト)”と題してBest of Artistsに選ばれたインドのザリア・ハシミ(Zaria Hashimi)と ジティッシュ・カラット(Jitish Kallat)、中国のソン・ドン(Song Dong)がアジアのコンテンポラリー・アートのパイオニアである自らのキャリアを語るもの。「アーティストありきのアートフェア」という演出が光っていた。

中国アートのコレクターは4割が華僑だといわれているが(1、欧米の個人コレクターが実際に中国アートを購入し、そのコレクターの層をさらに厚くしていた。Enrico Navarra(パリ)のギャラリストは次のように語った。「このアートフェアに来ているコレクターは、そうだな・・・4割は欧米人だね。そして6割がアジア人だ。欧米人は、中国アートを買いに来ている。もちろん、投資の意味もあるだろうけれど、グローバリズムの渦中、中国のコンテンポラリーアートを買うことに意味を見出しているのではないか」。また、そうした動きと並行して、アジアに散らばる華僑や中国本土のニューリッチが欧米のアーティストの作品を買う現象も見られた。韓国のクッチェ・ギャラリー(Kukje Gallery)で売られていたダミアン・ハーストは台湾のコレクターが購入したという。

総じて、ShContemporaryとは、中国アートを世界にアピールしたアートフェアであったといえる。現在、2008年北京オリンピックを目前に、沸騰状態が続く不動産市場における取引と、中国元の海外への持ち出しを政府が規制していることから、外国人とくに欧米人が美術品を投機目的として購入しているという(2。しかしながら、Enrico Navarraのギャラリストが言うように、欧米人が中国アートを所有することは、投機という目的以外に、アジアから発せられたグローバリゼーションのうねりを、自ら体験することを意味するのかもしれない。

アート関係者の間では、このフェア存続に関して様々な憶測が飛び交っていたが、2008年に向けてすでに走り出していることが会期中に表明された。 2008年は9-11月の上海ビエンナーレにあわせて開催されるそうだ。さらには、8月の北京オリンピック、2010年5月の上海万博と、今後中国の国際イベントは目白押しだ。アート関係でいえば、2007年末までに、ポンピドゥー・センターの中国分館が設立される予定であり、2010年までには中国に美術館を1000館設立するという計画も続行中だ。
ShContemporaryは大成功であったと、主催者によって高らかに宣言された。アートマーケットのボーダーラインは果たして広げられたのか。また、中国経済の好景気が終息すると予測される上海万博後の2010年以降、中国はどのように変化していくのか。中国アートのインパクトを世界に発信していくShContemporaryの今後に注目したい。

<参考文献>
1) 石原悦郎「アートディーラーとしての必然、中・韓フェアの魅力」、『月刊美術』 2007年4月号 
2) 「中国アートマーケット入門」、『美術手帖』 2006年7月号


photo & text by 高野真理子

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