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アート・バーゼル 38

Art Basel 38会場

 スイス、バーゼルといえば、時計宝飾の見本市「バーゼル・ワールド」で有名だが、もう1つ世界最大級の見本市があるのをご存知だろうか?それは毎年6月に開催されるアートの見本市、「Art Basel(アート・バーゼル 以下、アート・バーゼル)」だ。欧州、北南米、アジアから300近い数の一流の画廊が集結し、世界規模で行われるアートの一大イベントには、アート関係者はもちろん、アート好きのセレブ達もお気に入りの作品を探しにプライベート・ジェットに乗ってやってくる。アート好景気といわれている近年、ニューヨークのアーモリー・ショーやロンドンのフリーズ(毎年11月開催)などのアートフェアも成長著しいが、その中でもアート・バーゼルは歴史があり、今年は6月13日から17日までの開催で売り上げはなんと推定で$500mil(615億円)あったといわれている。

Art Basel 38会場中庭
Galerie Eva Presenhuber
手前:フランツ・ヴェストの作品
メインスポンサーUSBのVIPルーム
Art Unlimited
屋外展示はポール・マッカーシーの作品
ダニエル・ビュレン, Passage de la Couleur, 1979-2007
Volta
来年の新リーダー3人 左から、アネッテ、マーク、ケイ ©Art Basel

 出展画廊は、ニューヨークやロンドンに拠点を持ちバスキアやダミアン・ハーストなど、80名以上の有名アーティストを取り扱っている Gagosian Gallery(ガゴシアン・ギャラリー)や先ごろロンドンの中心、ピカデリー・サーカスに新たなスペースを構えたWhite Cube (ホワイトキューブ)など、いずれもこの世界では知らない人はいないといわれるギャラリーばかり。日本からはSCAI THE BATHHOUSE、小山登美夫ギャラリー、シュゴアーツ、ギャラリー小柳が出展していた。


 今年はヴェネチア・ビエンナーレ(イタリア)、ドクメンタ12(ドイツ)、ミュンスター彫刻プロジェクト(ドイツ)といった大型国際美術展のオープニングが同時期に開催されることもあり、それに関連する作品が数多く展示・販売されていた。例えばヴェネチア・ビエンナーレのアルセナーレで展示していたフランツ・ヴェスト(オーストリア)の作品がGalerie Eva Presenhuber(ギャルリー・エヴァ・プレゼンフーバー/スイス)で、またGalerie Urs Meile(ギャルリー・ウルス・ミーレ/北京、スイス)ではドクメンタ12で話題になったアイ・ウェイウェイの作品がみられた。ギャラリストはその時期に行われている展覧会や、社会情勢などを考えながら作家や展示に工夫をしているので、ただ「作品を買う」ということだけではなく、文化や社会間で異なる現在進行形のアート事情も垣間みることができる。


 アート・バーゼルの構成は、本体であるギャラリーがブースを構える会場をメインとし、若手作家の個展を行う「Art Statements(アート・ステートメント)」と若手ギャラリーにフォーカスした「Art Premiere(アート・プレミア)」、アーティストや批評家、ギャラリストを招いてのトーク「Art Conversations(アート・カンバセーション)」、映像作品を上映している「Art Film(アート・フィルム)」、また2000年から始まった大作を対象とする展示「Art Unlimited(アート・アンリミテッド)」と、昨年からスタートした屋外展示「Public Art Project(パブリック・アート・プロジェクト)」などがある。そのほかにもCDショップやカフェ、本屋なども充実しており、また託児所の機能をもつ子供のためのワークショップフロア「Art Kids(アート・キッズ)」がある。VIPしか入れない特別フロアはおしゃれにコーディネイトされており、宝飾やプライベート・ジェットなど各スポンサーによるプレゼンテーションも充実している。まるで会場はアートのアミューズメントパークのように、とにかく広く、活気がある。


 アート・アンリミテッドでは、ギャラリーごとのブースではなく作品で区切られており、インスタレーションやビデオアートなど比較的規模の大きな作品が展示されている。さしずめヴェネチアビエンナーレなどの国際展の展示風景を思わせるが、ここではどれも販売しているのだから驚きだ。アートフェア東京 2007にも出展したGalleria Continua(ギャラリーコンティニュア/ 北京、サンジミニャーノ)から出品していたダニエル・ビュレンの作品「Passage de la Couleur (1979-2007)」は、エスカレーターを売っているのか、それともビュレン作品特有のあのストライプを売っているのか困惑してしまう。そのダニエル・ビュレンのエスカレーターで1階に降りたらアーティストのリクリット・ティラヴァニャ(タイ)を発見。彼は、鑑賞者が積極的に参加することでできる小さなコミュニティーを作品とし、21世紀の新しいアートシーンを切り開いたことで有名だが、もしやその作品が値段をつけて売られているのかも!?と会場中を探すも見つけられず。しかし、翌日の新聞で彼が「Art On Stage」というイベントでオーケストラと一緒にパフォーマンスを行ったことを知った。それにしてもリクリット・ティラヴァニャしかり、村上隆や奈良美智、美術評論家のボリス・グロイス(ロシア-ドイツ)などがお茶を飲んでいたり、ギャラリストと談笑していたり、はたまたお土産を買っていたりと、アートファンにとっては興奮してしまいそうなほど数多くのアート著名人が町中にいる。彼らと話せるチャンスがゴロゴロと転がっているのもこのアート・バーゼルの魅力だと思う。


 アート・バーゼル期間中、バーゼル市内はアートフェア本体以外にも若手のギャラリーによるアートフェア「Liste (リステ)」や「Volta (ボルタ)」や「SCOPE (スコープ)」、40歳以下のアーティストを支援する「Swiss Art Awards(スイス・アート・アワード)」などサテライト企画が目白押しだ。バーゼル市内にはヘルツォーク&ド・ムーロン建築のSchaulager(ショーラガー)、レンゾ・ピアノ建築のFondation Beyeler(バイエラー財団美術館)やKunstmuseum Basel(バーゼル市立美術館)など魅力的な建築と展覧会が町中に点在している。バーゼル市立美術館は17世紀半ばに個人のコレクションを大学と市が買い取り、一般に開館したヨーロッパで最も古い市立の美術館で、特に中世のコレクション知られている。ホルバインやアルブレヒト・デューラーなど非常に充実した内容で旅の疲れを癒してくれた。


 英国雑誌「Art Review」で毎年特集される「アート界で最も影響力のある人 2007年」の第5位に選ばれるほどアート市場の活性化に貢献したアート・バーゼル総合ディレクターのサム・ケラーは、今年でディレクターを辞任し、来年よりバイエラー財団に就任することが決まっている。2008年からは三人体制で行われ、アーティスティック・ディレクターのケイ・ソフィー・ラビノヴィッツ、組織運営と会計管理を担当するアネッテ・ショーンホルツァー、フェア全体の戦略及びスポンサー担当のマーク・スピグラーが今後のアート・バーゼルの顔になり、それぞれの分野の強化を図るようだ。サム・ケラーの後任ということもあって来年のアート・バーゼルがどのようになるのか、今後の展開が楽しみだ。


photo & text by 大隈理恵

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