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| 江戸時代の小振りの蕎麦猪口と蝶の模様の茶托 |
時代箪笥、古裂(こぎれ)、陶磁器等和骨董を中心に販売する灯屋さんは、代々木参宮橋に本店を構え、さらに都内4カ所に個性的な店舗を展開しています。古裂を通して、オノ・ヨーコやジョン・レノンとも親交が厚かったというこだわりの店主渋谷さんに、初めて訪れる骨董店の「いろは」を伺いました。
まず江戸時代の小振りの蕎麦猪口と蝶の模様の茶托でお茶をいただいて、粋です!
灯屋の由来
- 灯屋というお名前の由来は?
古いものを収集することは、百鬼夜行といいますか、暗闇を手探りで探すようなものです。贋物や詐称が日本だけでなく世界中どこでもつきまとうものですから、集めてはみたいが物の判断に自信がない、ぶつかるのが怖くてそろりそろりになっている人たちの足元を照らす一灯になれば、という思いから名付けました。
- 古い布や織物が専門と伺いましたが、布って、いつくらいのどこのものって、どこかに書いてあるんですか?(笑)どうやって年代を特定するんでしょう?
ジーンズの裾が広がったりせばまったり、ネクタイの幅が太くなったり細くなったりするのと同じように、工芸品も必ず変化しています。染織では、紋様や織り方、技法など、その変化や特性から探っていきます。ところが文様は、うろこ文様など、室町や平安時代に確立されたものが延々と続いている場合もあります。そうなると文様の種類だけみてもいつの時代かわからないので、組織や織り方を見ていって、年代を特定するんですね。
- 奥が深そうですね。たくさん勉強しないと...。
専門家でなければ、わかりやすい特徴をもったものをいくつか意識的に覚えるだけでも見方が広がります。料理のちょっとしたコツを覚えるのと同じようなものです。
人の手から生まれる工芸の魅力
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| 大胆な絞り染めと細密な刺繍が絶妙 |
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| 江戸時代の小袖裂、95,000円 アートフェア東京には、小さな古裂が5,000円から並ぶそうだ |
- 古いものの中でも、灯屋さんが「良い」と思われる基準は何でしょう?
人間の工芸力ですね。それは身体的な労力の産物としての作品、つまり人間がものをつくるということです。音楽や料理や演劇やバレエのように、人間が作り出したものに興味があります。
- 手技がすごい!と思えるものですか?
たとえば「辻ケ花」は、桃山に生まれ江戸初期には消えていく技法ですが、おびたただしい絞りの連続の中で、日本的技法を駆使しながら優美で賢 固な細密として表現している技法です。そこに宗教観や生死観も感じられる。見て「美しい」という感覚的なものもありますが、こういった工芸力を表に押し出 さない優美なものに惹かれます。
- 奥ゆかしい感じですね。
ヤワな感じじゃなくて、ものすごく強いけれど、ぜんぜんアピールはしない。外に出ないところの面白さといいますか、細かいところにも手をぬかないところですね。
- 70年代に建てられたビルの細部ばかり撮っている友人がいるんですが、こんなところ誰もみないのに!という部分の仕上げ方が素晴らしいと言うんです。そこに日本の技術力を見ているわけですが、それは時代をずっと遡っても、やはり日本の技術の特徴としてあったんですね。
工芸は商業の世界で成立していると思いがちですが、作る人にとっては、もっと内的なことだったと思います。染織家や大工さんが良い仕 事をするのは、経済的なことではなく、いつもレベルの高いことをやっていこうという、自分の限界への挑戦の連続だと思います。さらに、ものづくりは一人の 職方だけでは完成しないものです。染織品であれば糸を作る人、織る人、染める人、と分業していて、きれいな糸がなければきれいな織物は出来ない。クオリ ティの高いものを作る同志の、技術のせめぎあいだったんですね。
- すると具体的にどの時代を多く扱っているのですか?
江戸期から明治期にかけたものが多いですね。
- 江戸時代は日本の工芸の中で、特別に面白いものがあったのですか?
長く続いた時代だったこともありますが、江戸時代は戦国時代が終わって安定した時期だったんです。士農工商の階級はあっても安心して過ごせた時期、つまり工芸家たちも職方たちも安心して制作できた時期なんですね。桃山時代にも素晴らしい工芸が作られましたが、一部の階級だけのものでした。それがやっと庶民まで広がっていったのも江戸時代です。
店主の言うことは鵜呑みにするな
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| 江戸時代の伊万里焼き |
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| インタビュー後、各々好みの骨董を物色するスタッフ |
- 骨董を楽しむ「はじめの一歩」にアドバイスを下さい。
僕ら骨董屋って、すごくエゴイスティックだと思います。それでいいと思ってるんです。そのエゴを感じて、なおかつ勇気を持って一歩踏み出して質問をしてくれたら、喜んで教えて差し上げます。
- 興味を持った人なら、灯を点してあげましょう、という感じですね。
そうです。でもお店の人に聞く前に、ちょっと立ち止まって「これ何だろう?」とまず自分に聞いてみてほしいですね。いろんなところに行っていろんなものを見ることが大事な行程だと思います。
- 見る人が気をつけることはありますか?
お店の人の言うことを全て信じないことです。うそだ、ということではなく、お店の人はそれぞれに熱が入っていて、たくさんある中から「これがいいですよ」って言っているだけですから、この作家がいいとあの人は言ってたな、くらいの冷静さを持った方がいいですね。
- いろいろな人の審美眼から自分の眼を育てていくということですね。
同じようなものを扱うお店3軒に行って、同じ質問をしてごらんなさい。たとえば、「信楽(しがらき)って魅力的ですよね」、と言ってみる。3 軒ともきっと違うことを言うと思うんです。良いという人もいれば、信楽より越前がいいと言う人もいるかもしれない、ぜんぜんよくないと言う人もいるかもし れません。自分の思っていることを天秤にかけてみて、幅広く興味を持つといいでしょう。専門の人にまじめに「いろは」を尋ねてみるのも手ですね。
アートフェア東京2007
- アートフェアでは何を展示しますか?
江戸時代の「古裂」を展示します。また、先日亡くなったある高僧が若い頃東大寺のお水取りの際に使った紙子という貴重なものもお見せしますよ。
日常の中にある美こそ、生活の本当の豊かさなのかもしれません。時間の堆積した店内でゆっくりひとつひとつの骨董と向き合いながら、眼を養うだけじゃなくて、時間に追われる普段の生活もちょっと反省しなくちゃ!と思いました。
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| 灯屋 ご主人 渋谷新三郎氏 |
1981年6月代々木参宮橋に開業。時代箪笥、古裂、陶磁器等和骨董を中心に販売。
参宮橋本店のほか、大正〜昭和初期のアンティークから現 代作家物の着物・帯、レンタルを行なう「灯屋2」、アンティークモール銀座内の「灯屋2銀座店」、時代箪笥の倉庫、修理工房にショールームを併設した「可 ナル舎」の3店舗を展開し、三越3店舗(日本橋店、銀座店、恵比寿店)のリビングコーナーにも出店。貴重な優品から普段遣いの骨董品まで、幅広い骨董の楽しみを提案している。






