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特集 | インタビュー|コレクションの楽しみ方 - 現代アート編

透明感あるコレクションセンスが定評のある現代美術コレクターのご夫妻。20年以上かけて集めら れたコレクションは、いまや値がつけられないほどの価値を持つものからデビューしたての若手の作品まで、多岐に渡ります。アートのある暮らしの楽しさを伺 いに、冬曇りの午後、閑静な住宅街にあるご自宅へおじゃましました。

玄関の扉を開けてまず眼にとびこんできたのは、カーテンが開いた杉戸洋の小さなペインティングと、草間彌生の黄色いカボチャのオブジェ。まるで小 さな劇場に招かれたようなわくわくした心地でリビングに足を踏み入れると、高い吹き抜けに浮かんだ村上隆のバルーン《DOB君》が、ニヤッと私たちを出迎 えてくれました。

はじめは一人、やがて二人で

気のぬくもりを感じさせるリビング
天井の作品は村上隆"DOB君"
奈良美智の作品とおしゃれな窓とのコラボレーション?
照明のあて方も、ちょっとした工夫で作品が引き立つ

- 作品を買うようになったきっかけはなんだったのですか?

Sさん(以下S):もともと僕は、小中高と美術部でアートが好きだったんです。学生時代からよく銀座や京橋のギャラリーを回っていました。
大学3年の頃、アルバイト代で買った田島征三という絵本作家の作品が初めてのコレクションです。会社に入ってからも休みの日によくギャラリーへいって、気に入ったものがあれば時々買っていました。

Kさん(以下K):私も美術は好きでしたけど、ギャラリーへいくようになったのは主人とつきあってから。「この人、面白いもの見てるんだな」と最初は思いました。ギャラリーの人も気さくで、だんだん楽しさが広がっていきましたね。

- 本格的にコレクションを始められたのはいつ頃ですか?

S:少しずつコレクションはしていましたが、増えだしたのは90年代に、自分たちと同世代のギャラリストが次々と新しいギャラリーを開き始めた頃だと思います。

K: みんなに勢いがあって楽しかったですね。「奈良美智という作家がいるんだけど」と紹介されても、まさか今のようなことになるなんて想像もできなかったような時代です。

S:僕らもちょうどこの家を建てた頃だったんです。それまでは普通のマンション。ぎゅうぎゅう詰めでなにを掛けていたかも覚えていない(笑)

- 家を建てる際、作品のことも考慮したのですか?

K:それなりに考えたつもりだったんですけど、ここに住んでしばらくすると、コレクションに拍車がかかってしまって(笑)
もうちょっとストックできる場所をつくっておけばよかった。


惹かれたものを、じっくり悩んで買う

- コレクションする際の基準はありますか?

S:ベースはやはり、なにか惹かれるものがあるかどうか。でもほとんど基準はないです。

K:平面もいいけど立体も買うし、写真もあります。
東京オペラシティギャラリーで、個人コレクターのコレクションを展示する「アートがあれば」展に参加したときにも、何人かに「クリーンな感じ」といわれました。どうしてかはわからないけど、自然とそういうことになっている。

- 買うときは二人で相談しますか?それともそれぞれが好きなものを買うんですか?

K:うちは相談系。(笑)だいたい2人の合意の元に買います。あまり好みが違わないんですよ。悩む時間は結構長いです。人によっては、ぱっと見て決める人もいるだろうけど、時間が経つと違って見えることもあるので、私たちはじっくり時間をかけて選ぶことが多いです。


暮らしのなかで見るアート

須藤由布子の鉛筆画
お茶を頂きながらじっくりと鑑賞したい作品
奈良美智のぬいぐるみ"Pup King"気持ち良さそうに日向ぼっこをしているよう

- どのくらいのペースで作品は掛けかえるのですか?

K:だいたいひと月です。久しぶりにあれを見たいね、という感じで自由に選びます。

S:久しぶりに掛けてみると買った時とはまた違って見えることもあります。

K:しばらくしてまた出すと「やっぱりいいな」と思えるものもあるし。

- 自分も変わっていきますからね。

K:そうそう。アートはいつ見ても感じたり考えたりできるのが楽しいですね。

- コレクションする喜びは何でしょう?

S:美術館やギャラリーって、わざわざ出かけてある種特別な気持ちで見るでしょう?それはそれで面白いけど、でも、こうして日常にあると、見方が変 わるところもあり、いろいろと違った発見をすることもあって楽しいです。ふと目に入った時に「ああ、コレはココがいいんだなあ」なんて気づいたり。

K:現代美術は作家と話ができることも面白い。いま若い作家がどんどん出て来ていますが、彼らが作品について一生懸命話すのを聞いて、魅力を感じれ ば比較的手頃な価格の作品で、自分でどう見えるか試してみたくなるんです。その後また違う作品がでてくると、その若い作家が新たに見せる感性とか変化や成 長など、楽しみが増えるということもあります。


買うことで若い才能を応援したい

左: 杉戸洋のペインティング
右: ピーター・土井具のペインティング
床上: ロブ・プルーイットの立体作品

- 普段どんなところで作品を買いますか?

S:基本はギャラリーです。
アートフェアにも行きます。老舗のギャラリーも新しいところも、新しい展覧会にはできるだけ足を運びます。若い ギャラリーも応援しています。今や立派なギャラリストやアーティストに育った同世代の人たちと時代を共有できたことが面白い体験だったので、次の世代がど うなるかも楽しみです。

K:若いギャラリストがセレクトする作家や作品に関する話ができるのも楽しみです。彼らにもどんどん良いもの、新しいものを見つけてもらいたいので、好きなものがあれば買って応援したいですね。


日々の暮らしのなかで本当にアートを楽しんでいるおふたり。時には家族のように、時には新しい友人のように、コレクションしたアートとの新鮮な関係が、二人の時間を豊かに彩っていました。

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